はじめまして、リンクアンドモチベーションのデータチームの東山です。
今回は、初期フェーズのデータチームならあるある?な「依頼殺到で忙殺」状態への打ち手として、うちのデータチームがとった役割定義について話してみたいと思います。
課題
まずは、どんな課題があったかの説明をさせてください。
少しずつチームが拡大してくるにあたり、「これも分析できないですか?」「こっちも何かできないですか?」と色々声かけを頂くようになり、(うれしい悲鳴ですが)忙殺されるような状況になりました。
中には、「あれ?その要件なら皆さんでやってもらった方がいいのでは?」というようなものまでありました。
理想的には、「モチベーションクラウドの解約を阻止するための高度な分析」や「モチベーションクラウドに将来搭載しうる機械学習機能のPoC」などが受けたい案件なのですが、 実際には玉石混交な案件依頼を峻別できない状態になっていたのです。
これらの理想と現実とのGAPを埋めるために、「ここから先は皆さんで、ここからはデータチームでやります」という役割分担をしっかりしようと思い至ったわけです。
データ組織の分類と段階
そもそもデータ組織の体制や役割についてちゃんと知識を持っていなかったので、↓を参考にしてみました。
- 『データマネジメント知識体系ガイド 第二版』(通称、DMBOK)
- 『実践的データ基盤への処方箋』
特にわかりやすかったのは2の『実践的データ基盤への処方箋』で、大いに参考にさせてもらいました。
データ組織の3形態
データ組織の形態には3つあるとされています。
うちのチームの場合はまさに初期フェーズの集権型であり、起きている問題も「タスク請負によるボトルネックの発生」でした。
そこで、まずは分権型を目指すことになるわけなのですが、現行のチームを解体していきなり分権型に行くのは少し現実的ではありませんでした。 というのも、現在の構成員5名のうち3名は新卒3年目までのメンバーで、独立して案件を回すと言うよりは上位者のサポートを受けながら業務をした方が効率的なのです。
そこで、各関連部署の中に「データ活用推進者」を立ててもらい、その方に次に紹介するような役割を担っていってもらうことにしました。
これにより、関連部署に並置されるデータ部を残しつつ、取り組みを通じて少しずつハイブリット型を目指すことができます。
データ組織の役割分担
関連部署の方達にお願いした役割の説明の前に、『実践的データ基盤への処方箋』の中で整理されているデータ組織とそれを取り巻く全体図を紹介します。
(引用元は著者らによる資料: [投影資料]『実践的データ基盤への処方箋』の刊行にあたって #TechMar / 20210210-2 - Speaker Deck)
これまでのデータチームは、この図の中の「データ組織」と「データ基盤利用者」のそれぞれの役割を担ってきました。
特に難しいところで言うと、「意思決定者」にレポートを行う「データアナリスト」や「データサイエンティスト」の役割でした。 というのも、直接的な業務経験のないドメインでのビジネス課題を解くためには、多くのヒアリングや合意形成が必要となります。 ここら辺の「どの問題を解くべきか?」の整理は非常に時間がかかり、声をかけていただく部署が増えるたびにキャッチアップのコストが膨らむ状況でした。
そこで「データ基盤利用者」の中で、「データアナリスト」の役割を関連部署の方たちに一部担ってもらうことにしました。
データアナリストと言っても、高度な統計モデリングや機械学習は前提とせず、ビジネスゴールへの課題整理と、SQLやスプレッドシートでのレポートの作成を主な役割としています。
いきなり「今日から君はデータアナリストだ!あとはよろしく!」とはいかないので、ビジネス課題の設定と分析仮説の立案方法などの手順を共有し、伴走しながら少しずつ移管していっています。 特に、最初の分析設計のところを軽視せずに行ってもらうことの重要性を強調しています。
分析設計の工程を省くことの危険性はこの記事『【上司共有用】データチーム立ち上げ時の落とし穴』に分析の落とし穴として書いたことがあるので、よければ参考にして下さい。
今後の展望
この取り組みはまだまだ始まったばかりで、課題は山積し、手探りそのものです。
なかでも大きなものは、データアナリストとして協働してくれているのがプロダクトマネージャーの方なんですが、そもそもリテラシーが高い方で、他の人だとちょっと難しいよね、というものです。 (そもそもこの方はSQLをかけたり、本番のDBのテーブルについても理解がありました)
なので、今後はデータウェアハウスとマートの整備をして、簡単に分析を行えるようにユーザビリティを強化していこうと思っています。
具体的には、古典的(?)なスタースキーマからdata vaultのようなデータモデリングまでを利用し、誰でも簡単に分析できる基盤作りを実現したいと思います。
ここら辺については後日、データチームの郡司から記事にできたら良いなと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました。